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マーケット情報

2025/08/12

暗号資産週間レポート(2025.8.3~2025.8.9)
ETHが円建てで史上最高値を更新!米国401(k)で暗号資産の組み入れが可能に!

【8/3~8/9週のサマリー】
・ETHが円建てで史上最高値を更新
・ETHは複数のトレジャリー企業による大量購入報道を背景に急騰
・トランプ大統領が401(k)で暗号資産への直接投資を可能とする大統領令に署名

【暗号資産市場概況】
 8/3~8/9週におけるBTC/JPYの週足終値は前週比+3.31%の17,201,250円、ETH/JPYの週足終値は同+25.47%の631,565円であった(※終値は8/9の当社現物EOD[8/10 6:59:59]レートMid値)。
 先週の暗号資産市場は、ETHが米上場企業のビットマイン・イマージョン・テクノロジーズ等のトレジャリー企業による大量購入報道を背景に買い優勢となったことや、XRPについてリップル社と米証券取引委員会(SEC)との訴訟が正式に終結したこと、さらにトランプ大統領が米国の確定拠出年金制度である401(k)(以下「401(k)」とする)で暗号資産への投資を可能にする大統領令に署名したことで暗号資産は堅調に推移した。
 週明けは、米国の複数の上場企業がトレジャリー資産の一部としてETHを購入したと報じられたことが材料視され、週末には円建てでの史上最高値を更新した。BTCもつれ高となり、一時117,000ドル台を回復した。特に企業によるETH保有は、米会計基準の改正やデジタル資産を財務資産として位置付ける流れを後押しするとみられ、中長期的な需要増加期待につながっている。
 加えて、長らく市場の不透明要因となっていたXRPの訴訟問題について、SECとリップル社が最終的な和解に達し、裁判が正式に終結した。これにより、米大手資産運用会社であるブラックロック等の機関投資家の参入が進む可能性が意識され、XRPは一時的に急騰したが、ブラックロック社はXRP現物ETFを申請する当面の計画はないと発表したことで上昇は一服した。
 さらに米国では、トランプ大統領が401(k)で暗号資産への直接投資を可能とする大統領令に署名し、年金運用の一部をBTCやETHなどに配分できる環境が整った。年金市場の規模を踏まえれば、この制度変更は暗号資産市場における需給構造にインパクトを与える可能性は高いだろう。
 週後半にはトランプ大統領がミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長を空席となる連邦準備理事会(FRB)理事に指名すると発表した。また、パウエル議長の後任として、ウォラー理事が最有力候補として浮上しており、FRBの人事を巡る報道が相次ぐ週となった。
 総じて、先週はファンダメンタル面でのプラス材料が相次ぎ、特にETHは円建てで史上最高値を更新し力強い値動きとなった。今後は8月中旬の経済指標やFOMCメンバーの発言、そして企業によるデジタル資産保有の動向に引き続き注目が集まるだろう。


[BTC/USD週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[BTC/JPY週間チャート(30分足)]

(TradingView提供のチャートにてSBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)



[ビットコイン現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、ビットコイン価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 橙線がビットコイン価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)


[イーサリアム現物 ETF の資金流入出と運用資産残高合計、イーサリアム価格]

(緑・赤のバーが資金流入出 / 白線が運用資産残高合計/ 青線がイーサリアム価格)
(SoSoValue提供のチャートより SBI VC トレード株式会社 市場オペレーション部作成)



【8/3~8/9週の主な出来事】



【8/10~8/16週の主な予定】


【今週のひとこと】米国401(k)へ暗号資産組み入れ

 米国時間8月7日(木)、トランプ大統領は米国労働省に対し、暗号資産を含むデジタル資産での運用を401(k)で提供できるようにする大統領令へ署名し注目を集めました。
 米国の401(k)は、日本の企業型確定拠出年金に近い制度で、会社員や公務員などが税制優遇を受けながら老後資金を積み立てられる仕組みです。勤務先企業がプランを用意し、従業員は給与の一部を天引きで拠出します。原則59歳まで引き出しはできず(早期引き出しにはペナルティあり)、株式・債券・インデックスファンドなど、プラン内の選択肢から運用を行います。2025年3月末時点での401(k)の資産規模は約8.7兆ドルと、その規模は非常に大きいといえます。
 就任当初から暗号資産推進に積極的なトランプ大統領にとって、今回の署名は米政府の戦略的ビットコイン準備(SBR)法案成立を前にした大きな動きといえます。米国の退職金口座全体の資産規模は43.3兆ドルと、世界有数の巨大市場です。今回の動きは、ビットコインのファンダメンタルズを支える観点からも注目すべき事象です。
 今回の大統領令は、暗号資産融和政策を推し進める政権方針の一環とみられます。本稿では是非の議論は一旦脇に置き、長期運用ポートフォリオにおける暗号資産の組み入れについて考えてみましょう。暗号資産には高いボラティリティがある一方で、一定のリスク分散効果があることも論じられています。米国資産運用会社大手のブラックロック社は「暗号資産は、主要なリスク資産と長期的に相関する理由が本質的にない」とし「より分散化されたリターン源を提供する可能性がある」と公開レポートにて述べています(長期運用における暗号資産の組み入れについての考察は過去の記事も併せてご覧ください。参考:「暗号資産レポート2024/12/16号【今週のひとこと】ポートフォリオにおけるビットコイン」)。
 もちろん、暗号資産は値動きの大きい資産クラスであるため、投資家自身の資産背景やリスク許容度を踏まえた適切なポートフォリオ構築を前提とすることが重要です。しかし、資産の一部として長期保有する戦略は、利益追求だけでなくインフレヘッジや分散投資の観点からも有効な手段となり得るのではないでしょうか。



(SBI VCトレード株式会社 市場オペレーション部作成)


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