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FLRトークン配布の税務上の取り扱いについての考察

FLRトークン配布の税務上の取り扱いについての考察

公開日: 2023年2月28日

最終更新日: 2024年3月7日

はじめに

2020年12月のXRP保有者を対象にFLRのエアドロップ(無償配布)が行われることがFlare Foundationより発表され、2023年1月10日に配布対象量の当初15%分が付与されました。ラップおよびデリゲートを行うことにより、残り85%とデリゲート報酬を受け取ることができるようになります。

本記事では、FLRのエアドロップに関して、考えられる税務上の取り扱いを紹介していきます。
FLRトークンの配布は、最初の15%と残り85%及びデリゲート報酬に分かれています。
それぞれのケースでどのような税務上の取り扱いになるかを説明します。

※注意事項
・FLRの取り扱いについては国税庁から正式なガイドラインが公表されていないため、本記事は参考情報として提供するものです。確定申告の際には税務署・税理士に相談の上、税務手続きを行うことを推奨します。
・当初の配布予定数量15%に対して、ラップすることで得られる全体の残り85%を本コラム内では「残り85%」と表現しております。

■目次
・最初の15%のエアドロップについて
 1、取得のタイミングをいつとするか?
 2、FLR取得時点で時価があるかどうか?
・残り85%及びデリゲート報酬について


最初の15%のエアドロップについて

2023年1月10日にFlare Networksのトークン配布イベントが実施され、FLR配布対象量のうち15%分の付与が始まりました。SBIVCトレードでは、1月17日にFlareトークン保有数量(2020年12月12日のスナップショット15%相当分)の確認が可能となる残高確認システムがリリースされました。

暗号資産をエアドロップ(無償付与)で取得した場合は、基本的には取得時点の時価がそのまま所得となりますが、今回のエアドロップの税務上の取り扱いで注意するべきポイントは以下の2点です。

■取得のタイミングをいつとするか?

取得日をいつとするかについては明確な決まりがないため、個別での税務判断となります。
FLRの取得日については以下の3つが考えられます。
  1.Flare Networksのトークン配布イベント日

  • 2023年1月10日のトークン配布イベント日を取得日とする

  2.実際に取引所から配布された日

  • 売買や出庫ができるかどうかに関わらず、取引所から自分のウォレットに配布された日時を取得日とする

  3.暗号資産を売買できる状態になった日

  • 実際にFLRを動かすことができる(売買・出庫ができる)ようになった日を取得日とする


Gtaxなどの損益計算ツールでは、取引所から出力される取引履歴に記載されている日付を参照して計算を実施していますが、取引履歴に記載の取得日と異なる日付を取得日としたい場合は、適切な処理が必要になるので注意が必要です。SBI VCトレードの損益計算用データでは、SBIVCトレードにおいて暗号資産が売買できる状態になった日(2023年4月19日)を取得日として作成しております。

■FLR取得時点で時価があるかどうか?

上記でエアドロップでは、取得時点の時価がそのまま所得となると記載しましたが、FLRを取得した時点で時価が存在していなかった場合は、0円で取得となります。

一方で市場に時価が存在する場合は、「FLRの取得数量」×「1FLRあたりの時価」がそのまま所得となります。

所得の計算をする際は、利用している取引所が公表する時価を参照するのが基本ですが、エアドロップで配布された日にその取引所で売買ができない状態で時価も公表されていないというケースでは、一般的な市場の時価を利用しても問題ないと考えられます。

損益計算ツール「Gtax」では、一般的な市場の時価を取得して計算を行っています。

残り85%及びデリゲート報酬について

ラップ・デリゲートを行うことで、配布対象量の残り85%及びデリゲート報酬を受け取ることができます。ラップ・デリゲートを満期まで行うと、FLRを約3年間かけて定期的に受け取ることになります。

ラップ・デリゲートは任意のタイミングで解除できることから、報酬等で定期的に受け取るFLRは、SBIVCトレードのレンディングのようにたとえ資産がロックされていたとしても、暗号資産を受け取る権利を得ていると言えます。

そのため、FLRを受け取るたびにその時点での時価が所得となることが考えられます。

確定申告で所得の計算を行う際は、FLRを受け取った日付の時価をすべて調べて計算に反映させる必要があり、受け取る回数が多い場合は非常に手間がかかります。

暗号資産の損益計算ツール「Gtax」では、取引履歴に記載されている日付をもとに時価を自動で参照するため手間をかけずに計算することができます。

損益計算を行う方法

確定申告を行うためには暗号資産取引で発生した利益額を正確に計算する必要があります。

ここでは、FLRのエアドロップ、ラップ・デリゲートに関する損益額の計算方法を紹介します。

【ご留意点】
損益計算を行う上で、「暗号資産を受け取った日時」の情報が重要になりますが、ここでは取引履歴に記載されている日時を「暗号資産を受け取った日時」として解説を進めていきます。

初回の15%のエアドロップの計算

暗号資産を無償で取得した場合は、受け取り時点の時価がそのまま利益となります。そのため、FLR受取日の価格を確認して利益額を計算します。
FLRの数量 × 受け取り時点の価格 = 利益

■残り85%及びデリゲート報酬の計算

定期的に付与される配布対象量の残り85%及びデリゲート報酬についても、受け取り時点の時価を利益として認識します。
FLRの数量 × 受け取り時点の価格 = 利益
例えば、これまでで10回FLRの受け取りをしている場合は、受取日によって価格が異なるので、それぞれの受取日の価格を確認した上で10回計算を行う必要があります。
 
【FLR価格の参照元について】
 損益計算を行う際は、取引を行っている取引所で公表されている価格を使用することが望ましいですが、価格情報の取得が難しい場合は一般的な暗号資産の価格情報サイトのデータを使っても問題ないと考えられます。

FLRの損益計算の流れ

実際に損益計算を行う際の流れを紹介していきます。
確定申告を行う場合、FLR以外の取引も含めたすべての暗号資産取引の損益額を計算する必要がありますのでご注意ください。

①取引履歴のダウンロード
まずは取引履歴をダウンロードします。
【損益計算用データのダウンロード方法】
https://www.sbivc.co.jp/faqs/content/apvc2fpgs6
【FLRラップ・デリゲート履歴のダウンロード方法】
https://www.sbivc.co.jp/faqs/content/x4z5_kzfjgy

②損益計算
取引履歴を元に損益額の計算を行います。
エクセルなどを利用してご自身で計算する際には、上述した計算方法を参考にしてください。
暗号資産の損益計算ツール『Gtax』では、SBIVCトレードのFLRのラップ・デリゲートの取引履歴に対応しています。①でダウンロードした取引履歴ファイルをアップロードするだけで、損益額を自動で計算することができます。

まとめ

FLRのトークン配布に関する税務上の取り扱いについて、最初の15%と残り85%及びデリゲート報酬に分けて解説しました。具体的な取り扱いについては国税庁からのガイドラインが公表されていないため、確定申告の際には税務署・税理士に相談の上、税務手続きを行うようにしてください。

自分で所得の計算を行う場合は非常に大変な作業になりますが、Gtaxなどの損益計算ツールを利用することで手間を大幅に削減することができますので、確定申告の際にはツールを活用することを推奨します。

第1回:暗号資産(仮想通貨)投資をするなら知っておきたい税金の基本
第2回:暗号資産(仮想通貨)の損益計算と確定申告のやり方をマスターしよう
第3回:暗号資産(仮想通貨)の確定申告で解消させておきたいQ&A


【ご注意事項】
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社Aerial Partners(https://www.aerial-p.com/)までお願いいたします。また、Aerial Partnersホームページ内の各種コラム(https://www.aerial-p.com/media/)もご参照ください。

執筆者:藤村大生
株式会社Aerial Partners
ビジネス開発部長
税理士・公認会計士

株式会社Aerial Partnersにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見が深い。監査法人出身でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務を牽引。