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前提:金とビットコイン(BTC)価格が同時に下落している理由
金(ゴールド)とビットコイン(BTC)が、ともに重要な局面を迎えています。
2026年6月12日現在、金は2026年初につけた高値から25%超下落し、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)も最高値から45%下落しています。
最高値からの下落率はビットコイン(BTC)の方が深いですが、米国とイスラエルによる対イラン軍事行動の本格化以降は、金の方が下落ペースが速いです。
図表1:ビットコイン(BTC/USD)価格推移(過去1年)
基準日:2026年6月11日
出所:Google Finance
図表2:SPDR Gold Trust(GLD)株価推移(過去1年)
基準日:2026年6月10日
出所:Google Finance
AI・半導体・大型IPO関連へ資金が流入しているとの見方も強まっていますが、理由はそれだけではありません。
かねてより各種レポートで解説してきた通り、ビットコイン(BTC)については、これまで継続的に大規模な購入を行ってきたストラテジー(Strategy Inc.)社が、今度は大規模な売り手に転じる可能性が懸念されています。
同社は一時的な売却後に購入を再開しており、株式や優先株を通じた資金調達の持続性が、今後のビットコイン需給を左右する要因となるでしょう。
関連レポート:マーケット論考:ビットコインの需給環境の悪化はしばらく続く可能性
https://hashhub-research.com/articles/2026-06-03-bitcoin-supply-demand-deterioration-continues
関連レポート:逆回転リスクが高まるストラテジー社の今後についてシナリオ別予想
https://hashhub-research.com/articles/2026-06-05-mstr-scenario-analysis
金(ゴールド)の価格下落については、米国の金利見通しが変化し、年内利下げ観測が後退する一方で、利上げの可能性が出てきたことや、トルコやロシアなどが自国通貨を守るために保有する金を売却していることも要因となっています。
またインドも金の売却こそしていませんが、自国通貨を守るために輸入関税を引き上げています。
金相場の巻き戻しは、2025年と2026年年初に記録的な上昇をした反動でもあるでしょう。
2025年は通貨価値毀損(ディベースメント)をテーマにしたトレンドでしたが、そのときのモメンタムは消え去りました。
筆者は、このトレンドが本格化する前から無国籍資産の重要性についてレポートを配信してきた立場ではあります。
関連レポート:国家債務を理解して、今なぜ無国籍通貨(ゴールド・BTC)が求められるかを読み解く
https://hashhub-research.com/articles/2025-02-08-understanding-national-debt-why-btc
本稿では、金(ゴールド)とビットコイン(BTC)という代表的な無国籍資産が下落基調にある中で、改めて無国籍資産について考え直します。
無国籍資産は財政懸念と金融戦争のヘッジ手段(保険)である
金(ゴールド)やビットコイン(BTC)などの無国籍資産の重要性については以前から説明していますが、より簡単に言えば、
- 主要国の財政悪化リスク
- 金融戦争リスク
の2つのヘッジ手段(保険)であると表現できます。
筆者は2023年以降、金(ゴールド)の重要性を指摘してきました。
それは、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて米国が対ロシア資産を凍結したこと、またコロナ禍後の急速な利上げによって米国の財政負担が顕在化した時期だったためです。
さて、このリスクは後退したでしょうか。
問うまでもなく、むしろリスクは大きくなっています。
イランとの戦争による戦費、トランプ関税が違憲判決となり還付を開始していることもさらに財政を圧迫する要因となっています。
イランはこれまでも金融制裁を受けてきましたが、戦争中は新たに中東の第三国の銀行に保有していたドル資産も凍結されています。
無国籍資産(特にゴールド)は、世界各国の政府や中央銀行にとって、こうしたリスクに備える保険のような役割を果たしています。
そして現在の売却は、その保険を取り崩している局面と捉えることもできます。
一方、この保険を保有し続けるコストは、ドルを保有することで得られる短期金利です。
短期金利が上昇する局面で、ドルを保有する魅力が相対的に高まるため、ゴールドが売られやすくなります。
では、イランとの戦争が終結した後には、金などの無国籍資産への需要はなくなるでしょうか。
むしろ世界各国は、再びヘッジ目的で保有を進めると考えられます。
債券王のジェフリー・ガンドラック氏の意見も紹介すると、ゴールドは利上げを受けて4,000ドル前後、あるいは4,000ドルを割り込む水準まで下落すると4月後半の時点で予想していました。
そしてそこから財政懸念が深刻化して、再び最高値を目指すと予想しています。彼は米国の財政赤字、ドル価値の低下、インフレの粘着性をかなり重く見ています。
参照:https://doubleline.com/markets-insights/gundlach-unlocked-positioning-for-inflation-and-a-weaker-dollar/?utm_source=chatgpt.com
イランとの戦争終結後や年後半の相場展開は現時点で読めませんが、その時期にこそ無国籍資産の真価が問われるでしょう。
米国の財政は引き続き悪化している
米国の財政は2026年に入って投資テーマとしては後退しましたが、財政は引き続き悪化しています。
超党的立場であるCBO(米議会予算局)の財政見通しを踏まえると、向こう数年でさらに悪化することが明らかになっています。
しかもこれは新たな戦争予算を含まないこと、期限付き減税が予定どおり終了すること、選挙対策で新たな財政支出などがされないことが前提になっています。
図表3:米国 公衆保有債務/GDP比率の推移と予測
基準日:2026年(CBO予測時点)
出所:Congressional Budget Office, The Budget and Economic Outlook: 2026 to 2036

図表4:米国 公衆保有債務/GDP比率の推移と予測
基準日:2026年(CBO予測時点)
出所:Congressional Budget Office, The Budget and Economic Outlook: 2026 to 2036
図表5:米国 財政赤字のGDP比率の推移と予測
基準日:2026年(CBO予測時点)
出所:Congressional Budget Office, The Budget and Economic Outlook
プライマリー赤字、すなわち利払いを除く赤字も2026年にGDP比2.6%が見込まれています。
つまり、利払いがなくても米国政府は赤字を出し続ける構造であり、利払いはその上に乗る増幅要因です。
財政再建には増税、給付抑制、裁量的支出の削減など複数の手段がありますが、政治的にはいずれも実行コストが高いと言えます。
結局のところ、通貨価値の下落を通じて実質的な切り下げをする以外に、ほとんど選択肢はありません。
総括
総括としては、このテーマに投資家は再び関心が高まる可能性があります。
金とビットコイン(BTC)は現在、いずれも高値から大きく下落し、それぞれ固有の需給上の課題を抱えています。
金にとっては、米国の利上げ観測や一部の公的機関による売却が短期的な逆風です。
一方、ビットコイン(BTC)については、Strategy Inc.をはじめとする大口投資家の購入余力や、資金調達環境の変化を注視する必要があります。
しかし、価格下落だけをもって、無国籍資産の投資テーマが終了したと判断するのは早計でしょう。
米国をはじめとする主要国の財政赤字は拡大が続いています。
また、経済制裁や外貨準備の凍結を経験した国々にとって、特定の国家や通貨制度に依存しない準備資産を保有する必要性も後退していません。
短期的には、金とビットコイン(BTC)の需給構造が改善するかが焦点となります。
中長期的には、財政悪化、通貨価値の低下、金融制裁への警戒が再び市場の主要テーマとなったとき、両資産の「無国籍資産」としての価値が改めて問われることになるでしょう。
その際、金とビットコイン(BTC)のどちらがより選好されるかは現時点では断定できませんが、一度価格のピークをつけたからといって、投資家がこれらの資産に長期間無関心でいられるとは限りません。
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提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research
