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ビットコイン(BTC)のチャートを眺めるだけでは、見えないものがあります。
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)の価格は執筆現在6万9,000ドル(約1090万円)前後。
2025年10月につけた史上最高値12万6,000ドルから約45%下落した水準です。
数字だけ追えば「下落相場」の一言で片付けられそうですが、ブロックチェーン上の取引データをもとに算出された各種指標を重ねると、もう少し複雑な構造が浮かび上がってきます。
弱さを示すシグナルが3つ。そしてその弱さと矛盾する、一つの異変。
今のビットコイン(BTC)はそういう局面にあります。
シグナル①MVRV比率約1.2 ――「回復途上」を示す体温計
MVRV(Market Value to Realized Value)比率は、現在の市場時価総額を「全保有者の取得コスト合計」で割った数値です。
市場全体として平均何倍の含み益があるかを示す、いわば体温計のようなものです。
現在値はおよそ1.2。
全保有者の平均取得コストは約5万3,000〜5万4,000ドルと推定されており、現在価格はそれを約20%上回っています。
過熱感はありません。
↑MVRV比率チャート。現在値約1.2は「冷静ゾーン」に位置する
(出典:blockchain.com)
歴史的に本格的な底値は、この比率が1.0を割り込む局面と重なってきました。
記録上は2011年にも同様の水準がありますが、当時はビットコイン(BTC)の流動性も市場参加者も現在とは比較にならない黎明期であるため、実質的な相場サイクルの参照としては2015年・2019年・2022年11月(FTX破綻後)の3回が意味のある比較対象です。
現在の1.2はそのゾーンから脱しつつある一方、本格的な強気相場の入り口とも言えない。
上に向かう確信がまだない局面です。
長期保有の視点では、歴史的に見て魅力的なゾーンに位置していることは確かです。
(※過去のデータはいかなる将来のリターンも保証しません。)
シグナル② 保有者の約半数が含み損 ――10年で3回しかない水準
流通しているビットコイン(BTC)のうち、現在価格より高い値段で取得した、つまり含み損を抱えているビットコイン(BTC)の比率が約50%に達しています。
↑Bitcoin: Supply in Profit / Loss (%)。青線(含み益比率)が急落し約50%水準まで低下。
(出典:BGeometrics)
これは過去10年を振り返っても、ほぼ大底局面にしか観測されてこなかった水準です。
ただし、「含み損保有者が多い=今が底」という単純な話ではありません。
この数字が示すのはあくまで「悲観がどこまで市場に浸透しているか」です。
売り圧力の源泉になりうる一方で、裏返せば「買い場を探している投資家にとって、売り手が十分にいる状態」とも読めます。
シグナル③ 大口はまだ動いていない ――Accumulation Trend Score

↑Accumulation Trend Scoreが3週間以上にわたって0.5を下回る。
(出典:https://x.com/glassnode/status/2026554524794593725)
1,000BTC以上を保有する大口投資家が積極的に買い増しているかどうかを0〜1で示す指標、Accumulation Trend Scoreが3週間以上にわたって0.5を下回り続けています。
大口が本格的に動き始める局面は、しばしば価格上昇の先行シグナルとして機能してきました。
現状、そのシグナルは点灯していません。
価格の回復力が鈍い理由の一つはここにあると考えられます。
異変 Coinbase(コインベース)の売り圧力が静かに弱まっている
3つのシグナルを並べると「とにかく弱い市場」という結論に向かいそうです。
しかしここで、データに一つ腑に落ちない点があります。
米国最大手の取引所Coinbaseにおける売り圧力が、ここ数日で明らかに弱まっています。
↑Bitcoin: Coinbase Premium Index。赤(売り優勢)が続く中、直近で緑(買い優勢)のバーが増加し始めている。
(出典:CryptoQuant)
含み損保有者が約半数いるにもかかわらず、売りが出てこない。
解釈は二通りです。
「すでに損切りできる人は売り切った」という枯渇の解釈か、「静かに需要を吸収している買い手がいる」という解釈か。
データだけでは判断できません。
ただ、弱材料が揃う局面でこの変化が起きていることは、見過ごしてよいものではないと考えています。
残された問い ――過去3回と同じ局面か
もう一つ、頭に置いておきたいデータがあります。
90日間の実現損益比率(Realized Profit/Loss Ratio、90日移動平均)が、数週間にわたって1.0を下回り続けています。
この水準が続いたのは過去10年で3回――2015年・2019年・2023年です。
↑BTC: Realized Profit/Loss Ratio(90日移動平均)。赤い部分が1.0割れの局面。
(出典:Glassnode)
3回それぞれの後に何が起きたかは、毎回同じではありませんでした。
「必ずこうなる」とは言えない。
ただ、どの局面も「何かが変わる前夜」に近い状況でした。
今がその4回目にあたるかどうか、答えはまだデータの中にはありません。
(※過去のパターンは将来の動きを保証しません。)
現状をひと言で言えば
暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)は今、弱さを示すデータと、弱さと矛盾する動きが同時に存在する局面にあります。
MVRV比率は「過熱なし・回復途上」を示し、含み損保有者の多さは歴史的に稀な水準です。
大口の本格的な動きはまだ見えない。
それでも、Coinbase(コインベース)の売り圧力は静かに後退しています。
強弱が混在したまま、方向感が定まっていない。それが現時点の各種指標から読める状態です。
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提供:HashHub Research
執筆者:HashHub Research
