▼目次
「ステーブル(安定した)コイン」は、その名称から、価格が常に一定であるとイメージされがちですが、実際には市場価格が目標値からズレることがあります。
このような現象は「ディペッグ」と呼ばれます。
ステーブルコインは、特定の価値に連動することを“目指す”仕組みであり、価格の固定が保証されているわけではありません。
この記事では、価格が変動する仕組みや背景にあるリスクを整理し、状況を冷静に判断するための視点をわかりやすく解説します。
ステーブルコインの基本とディペッグの意味
まず、ステーブルコインがどのようにして価格を維持しているのか、その基本的な考え方を整理します。
ステーブルコインとは
ステーブルコインとは、米ドルや日本円などの法定通貨、あるいは金(ゴールド)などの実物資産と価値の連動を目指したトークンです。
その性質や仕組みによって、
- 「暗号資産」として扱われるもの
- 「電子決済手段」として位置づけられるもの
など、分類が異なります。
価格を一定水準に保つために、発行体が同額の法定通貨を銀行に預けたり、プログラムによって供給量を調節したりする仕組みが用いられています。
価値を固定(ペッグ)することを目指すというこの仕組みが、ビットコイン(BTC)などの一般的な暗号資産銘柄との大きな違いです。
例えば、米ドルと1:1でペッグすることを目指すステーブルコインである USDC (USDコイン)は、裏付け資産として米ドルを保有する仕組みを採用しています。
日本においては、USDCのような法定通貨との価格連動を目指すタイプ(法定通貨担保型)のステーブルコインは「電子決済手段」として位置づけられており、資金決済法のもとで取り扱われています。
ディペッグとは
目標としている価格(例:1ドル)から市場価格が大きく乖離してしまう現象を「ディペッグ(De-peg)」と呼びます。
英語の「Peg(ペッグ)」には釘で固定するという意味があり、暗号資産の文脈では特定の資産に価格を連動させることを指します。
これに、「否定」や「逆」を意味する「De」がつくことで、固定が外れる、つまり目標価格から外れてしまうという意味となるのです。
ステーブルコインの価格が維持されるのは、市場の需給バランスや、裏付け資産への信頼が保たれている時だけです。
何らかの理由でこのバランスが崩れると、特定の資産(法定通貨や金など)の価格からディペッグしてしまう可能性があります。
なぜディペッグが起きるのか(原因整理)
ステーブルコインの価格が維持できなくなる背景には、主に以下のような要因が考えられます。
1.市場の需給バランスの崩れ
市場に不安が広がり、売り注文が急増すると、価格が一時的に維持できなくなることがあります。
通常は、価格がわずかにズレても裁定取引(アービトラージ)と呼ばれる仕組みによって、価格差を埋めようとする力が働きます。
しかし、その調整を上回るスピードで売り注文が集中した場合、ディペッグが発生することがあります。
2. 裏付け資産や仕組みへの不信感
発行体や仕組みに対する信頼が揺らぐことも、ディペッグの大きな要因です。
例えば、
- 裏付け資産が十分に保有されているのか
- 預け先の金融機関は安全か
- 情報開示は適切か
といった点への懸念が広がると、売りが加速し、ディペッグを招く一因となります。
ステーブルコインの種類ごとのリスク構造
ステーブルコインにはいくつかの種類があり、それぞれ価格を維持する仕組みが違うため、直面するリスクの性質も異なります。
法定通貨担保型
発行体が銀行などの金融機関に法定通貨を預け、その裏付けによって価格を維持するタイプです。
高い信頼性と安定性がある一方、発行体や預け先金融機関といった特定の主体に依存するため、これらが破綻した場合のカウンターパーティーリスク(取引相手の信用に依存するリスク)があります。
暗号資産担保型(分散型)
他の暗号資産(イーサリアムなど)を担保にする分散型のタイプです。
プログラムによって透明性が確保されている一方、担保にしている資産自体の価格が急落すると、担保不足によって仕組みが維持できなくなるリスクがあります。
アルゴリズム型(無担保・低担保)
プログラムによる供給調整により価格の維持を目指す、無担保または低担保タイプです。
このタイプは特定の管理者が不要な反面、仕組みへの信頼が一度崩れると連鎖的な暴落、いわゆる死のスパイラル(death spiral)を止めるのが難しいという脆弱性を抱えています。
ディペッグが起きたら市場はどうなるのか
ディペッグが発生した時、市場ではどのような連鎖反応が起き、どのような展開が予想されるのでしょうか。
一時的な乖離と回復のプロセス
軽微なディペッグであれば、市場の自己修復機能(裁定取引などにより価格差を埋めようとする動き)や市場参加者の買い戻しにより、再び目標価格に戻るケースも見られます。
短期的な価格変動に対して過度に反応すると、結果として不利な取引につながる可能性もあります。
資産価値への影響
少額の乖離(USDCの場合、0.99ドルや0.98ドルになること)が必ずしも重大な問題を意味するわけではありません。
一方、裏付け資産に関する重大な不備やシステム上の欠陥などが原因の場合は、長期的な影響につながる可能性があります。
そのため、情報の出所を確認し、一時的な需給の乱れなのか、根本的な欠陥なのかを冷静に見極めることが重要です。
初心者が理解しておくべきポイント
ステーブルコイン取引を行ううえで、特に意識しておきたいポイントが二つあります。
1.「ステーブル=絶対固定」ではない
ステーブルコインは、あくまでも特定資産の価値との連動を目指す仕組みであり、価格変動や市場リスクがゼロになるわけではありません。
2.リスク分散と銘柄選び
一つの銘柄や仕組みに資産を集中させるのではなく、発行体や仕組みの異なるものに分散させることを検討する視点が大切です。
法規制の動向や、透明性の高い情報開示を行っているか等も、重要な判断材料となります。
ステーブルコインの活用方法
ステーブルコインは、単に保有するだけでなく、活用することで報酬を得られる可能性があります。
その代表的な方法の一つがレンディング(貸コイン)です。
レンディングとは、保有している暗号資産やステーブルコインを一定期間貸し出し、その対価として利用料(賃借料)を受け取る仕組みを指します。
例えば、米ドル連動型のステーブルコインである USDC は、価格の安定性を前提に活用しやすく、レンディングとの相性が良いとされています。
ステーブルコインをレンディングに活用するメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 価格変動リスクを相対的に抑えながら運用できる
- 保有している資産を活用し、追加的な収益機会を得られる
- 売却せずに資産を維持したまま活用できる
一方で、レンディングには元本保証があるわけではなく、サービス提供者の破綻リスクなども含めて理解する必要があります。
SBI VCトレードは、金融庁・財務局に登録された暗号資産交換業者として、国内で初めて、USDCを活用したレンディングサービスの提供を開始しています。
資産の活用方法の一つとして、仕組みを理解したうえでご検討ください。
▶USDCレンディング特設サイト: https://www.sbivc.co.jp/usdc?tab=lending
※USDCレンディングは外貨預金ではありません。
▶関連記事:暗号資産(仮想通貨)の「レンディング」とは|暗号資産(仮想通貨)を貸し出すだけで対価が得られる!
まとめ
ステーブルコインの価格変動には理由があり、そのリスクの性質は種類によって異なります。
- ステーブルコインも市場の需給や信頼によって価格が変動し得る
- 種類ごとに裏付けとなる仕組みやリスクの所在が異なる
- 「安定=安全」とは限らない
こうした前提を理解することで、短期的な価格変動に振り回されることなく、より冷静な判断が可能になります。
ステーブルコインの仕組みと特性を理解したうえで活用することで、その利便性をより適切に活かすことができるでしょう。
---
※本コンテンツは暗号資産(仮想通貨)及び電子決済手段等の情報提供のみを目的としたものであり、投資や取引を推奨するものではありません。また、記載内容は執筆時点の一般情報に基づいており、将来の価格動向を示唆するものではありません。
---
