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第10回 暗号資産のWeb3活用|関係図で見るWeb3 〜エコシステム編〜

第10回 暗号資産のWeb3活用|関係図で見るWeb3 〜エコシステム編〜

公開日: 2025年11月20日

最終更新日: -

▼目次

    「暗号資産のWeb3活用」シリーズでは、SBI VCトレードをご利用の皆さまや、暗号資産(仮想通貨)の活用に関心のある皆さまに向けて、暗号資産を「保有」するだけでなく、積極的に「活用」するための視点をご紹介しています。

    本シリーズではこれまで、暗号資産取引所(※1)、ウォレット、Web3サービス(ブロックチェーンゲーム、NFTマーケットプレイス)といったWeb3を構成する主要なセクターを個別に取り上げてきました。
    総務省は、Web3を「ブロックチェーン技術を基盤とする分散型ネットワーク環境」と定義しています(※2)が、この環境の中で、暗号資産が「価値の交換手段」としてどのように働き、どのように循環しているのか、大まかな流れを理解できるとWeb3の全体像がさらに見えやすくなります。

    本稿では、各セクター間の関係性を整理し、「暗号資産取引所を起点・終点とした資産循環」という観点から、Web3エコシステムの全体像を概念図で解説します。

    ※本稿で紹介する資産循環モデルは、Web3エコシステムの構造を理解しやすくするための概念モデルです。実際の資産移動の手順や仕様は、利用するサービスやネットワークによって異なる場合があります。

    1. 関係図の主要セクター

    SBI VCトレードのコラム「暗号資産のWeb3活用」シリーズでは、暗号資産取引所、ウォレット、Web3サービス(ブロックチェーンゲーム、NFTマーケットプレイス)を主要セクターとして、暗号資産をWeb3で活用するための初歩的な概要を解説してきました。

    上記の「ユーザーを中心とした各要素の関係図」は、暗号資産やNFTがどのような流れで各サービス間を循環しているのか、全体像を大まかに把握するための概念図として筆者が作成したものです。
     
    Web3の世界に入るとき、多くの人は、まず暗号資産を購入します。この役割を担っているのが、中央集権型取引所(CEX/Centralized Exchange)です。
    なお、SBI VCトレードの取引所や販売所も、CEXの形態で運営しています。

    暗号資産取引所の口座では、法定通貨と暗号資産を交換し、購入した資産を自分のウォレットに出庫することで、Web3サービスで利用可能となります。
    逆に、Web3サービス内で得た資産は、ウォレットを介して再び口座へ戻すことで、法定通貨や他の暗号資産に交換できます。
     
    この図で説明しているのは、以上のような大まかなフローですが、次のセクションではさらに解像度を高めながら、資産循環の概念モデルをご紹介します。

    2. 資産循環モデルで見るWeb3のエコシステム

    それでは、暗号資産取引所を起点・終点とする資産循環を、具体的なプロセスとして見ていきましょう。
    なお、本稿では、「暗号資産のWeb3活用」の大まかな理解を目的として、実際のサービス構造を簡略化した概念モデルで流れをご紹介します。

    まず、前提条件として、ユーザーはSNS、Discord、インターネットコンテンツなどを通じてWeb3に関する情報を収集します。収集した情報に基づき、暗号資産取引所の口座を開設したり、ウォレットを作成したりします。これで、暗号資産をWeb3サービスで活用する準備が整います。


    ①  暗号資産の購入と出庫
    暗号資産取引所・販売所で、法定通貨をイーサリアム(ETH)などの暗号資産に交換します。取得した暗号資産は自己管理型のノンカストディアルウォレットに出庫することで、ブロックチェーン上のサービスに接続できるようになります。
    なお、ウォレットへの出庫時に発生するトランザクションはブロックチェーン上で処理されるため、ネットワーク手数料(ガス代)がかかります。
     
    参考
    ・「第2回 暗号資産のWeb3活用|暗号資産交換業者とは?SBI VCトレードでできること
    ・「第3回 暗号資産のWeb3活用|取引所口座とウォレットの違いとは?関係図で解説
    ・「第6回 暗号資産のWeb3活用|ネットワーク手数料とは?仕組みと役割をわかりやすく解説


    ②  Web3サービスの活用
    ウォレットをWeb3サービスに接続すれば、さまざまな活動が可能になります。
    ブロックチェーンゲームであれば、プレイを通じて暗号資産やNFTを報酬として獲得したり、プレイヤー同士がコミュニティ内で交流したりします。ここで得たNFTはゲーム内アイテムとして機能し、暗号資産やトークンはゲーム内通貨として使用できます。

    参考
    ・「第5回 暗号資産のWeb3活用|FTとNFTとは?各トークンの違いや特徴を解説
    ・「第7回 暗号資産のWeb3活用|ブロックチェーンゲームとは?従来ゲームとの違いを解説


    ③  資産の交換
    ゲーム内で獲得したNFTは、提携するNFTマーケットプレイスで出品できます。取引が成立すると、対価として暗号資産がウォレットに入金されます。
     
    参考
    ・「第8回 暗号資産のWeb3活用|NFTマーケットプレイスとは?特徴と種類を解説


    ④  暗号資産の入庫
    ウォレットで管理している暗号資産を、再び暗号資産取引所の口座に入庫することで、法定通貨に交換したり、他の銘柄への再投資に回したりすることも可能です。
    こうして、Web3サービスで得た資産が現実の経済活動に還元されます。
     
     
    基本的な流れは以上です。
    実際のWeb3サービスは、実に多様なセクターが存在しており資産循環の流れも複雑なため、上記は全体の流れを理解するための一助としてご活用ください。

    3. 情報収集とセキュリティ意識

    Web3の世界では、多様なサービスやプロジェクトが国内外で展開されているほか、様々な思惑を持った人たちが存在しています。そのため、暗号資産を口座から出庫してWeb3サービスで活用する際には、常に情報収集やセキュリティ意識が求められます。

    第一に、DYOR(Do Your Own Research:自分で調べる)の実践が重要です。公式発信やブロックチェーン上のデータを確認しながら、信頼性のあるプロジェクトかを自ら判断しましょう。
     
    また、SNSやコミュニティを介して偽サイトに誘導するフィッシング詐欺、実態のないプロジェクトによる資金調達詐欺(ポンジ・スキーム)など、さまざまな詐欺が報告されています。
    ウォレットの秘密鍵やシードフレーズを他者に共有したり、不審なリンクをクリックしたりすることのないよう、常に高いセキュリティ意識を持つことが大切です。

    参考
    ・「第4回 暗号資産のWeb3活用|急増中!フィッシング詐欺から資産を守る
    ・「第9回 暗号資産のWeb3活用|DYORとは?『自分で調べる力』で資産を守る

    4. まとめ

    本稿では、「暗号資産取引所↔︎ウォレット↔︎Web3サービス」という流れで資産が移動し、価値が生まれる循環モデルをご紹介しました。
    この中で、暗号資産取引所はエコシステムの出入口として、ウォレットは資産移動のハブとして機能します。
    Web3は、ブロックチェーンの透明性を活かしながら、自らの手で資産を管理し、サービスを選択できる点が魅力です。一方で、セキュリティ意識を高く持ち、DYORを実践していくことが、暗号資産のWeb3活用においては重要です。
     
    本稿が、Web3のエコシステムを理解するための参考となれば幸いです。


    (※1)正式には「暗号資産交換業者が提供する販売所・取引所及び各種サービス」ですが、文中では一般的な理解のしやすさを優先し、「暗号資産取引所」と記載しています。
    (※2)出典:総務省, 「令和5年版 情報通信白書」
     
     
    参考
    INNOPAY, The Web3 landscape for payments