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【2025年11月最新】ポルカドット(DOT)の今後~直近の価格動向と将来予測

【2025年11月最新】ポルカドット(DOT)の今後~直近の価格動向と将来予測

公開日: 2025年11月26日

最終更新日: -

▼目次

    ポルカドット(DOT)は、異なるブロックチェーンを安全に接続することを目的に設計された暗号資産(仮想通貨)です。
    2016年に構想が始まり、長い研究開発期間を経て2020年にメインネットを稼働しました。
    創設者はイーサリアム(ETH)の共同創業者でもあるギャビン・ウッド(Gavin Wood)氏で、「相互運用性」と「共有セキュリティ」を中核理念としています。
    本コラムでは、ポルカドット(DOT)の技術的特徴とこれまでの経済構造、直近の市場動向、そして今後の展望を整理します。

    暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)の特徴・仕組み ― “つなぐ”思想から始まったマルチチェーン構想

    ポルカドット(DOT)は、異なるブロックチェーン同士を共通のセキュリティ基盤のもとでつなぐことを目的に設計されたレイヤー1チェーンです。
    ネットワークの中核にある「リレーチェーン(Relay Chain)」が検証と安全性を一括で担い、その上に各種アプリケーション向けの「パラチェーン(Parachain)」が並列して動作します。
    この仕組みにより、ポルカドット(DOT)は「ひとつの巨大なチェーン」を作るのではなく、「複数の特化型チェーンを安全に連携させるネットワーク」として機能します。

    コンセンサス方式はNPoS(Nominated Proof of Stake)を採用しており、ステーカーが信頼するバリデータを指名してネットワークの安全性を確保します。
    イーサリアム(ETH)がL2(セカンドレイヤー)を後から積み上げる形で拡張しているのに対し、ポルカドット(DOT)は設計当初から「並列実行」と「共有セキュリティ」を前提とした“統合型マルチチェーン”を志向してきました。

    ユースケースはDeFi(ディーファイ)やゲーム、分散IDなど幅広い分野に及びますが、近年はエコシステム全体の取引活動が鈍化し、「構造としては優れているのに使われにくいネットワーク」という課題が浮き彫りになっています。

    ポルカドット(DOT)の供給構造と過去の固定費モデル

    トークノミクスと初期設計 ― 「発行」と「吸収」の歯車が噛み合わなかった経済構造

    ポルカドットチェーンのトークンであるDOTは、ネットワークを維持するためのステーキング報酬を通じて新規発行される仕組みを採用しています。
    このモデルでは、ポルカドット(DOT)を保有してネットワーク運営に参加する人(ノミネーター)が、取引検証を担うバリデータを指名し、その協働によって安全性を確保します。
    報酬として新たなポルカドット(DOT)が発行されることで、ネットワークは持続的に稼働し続ける一方、発行量に上限がないインフレ構造を持つ点が特徴です。

    発行によって市場に新しいポルカドット(DOT)が流入する一方で、それを吸収するメカニズムもいくつか存在します。
    代表的なのは、ステーキングによるロック、ガバナンス投票や国庫支出による一時拘束、そしてプロジェクト接続のためのスロットオークションです。
    なかでもスロットオークションは、ポルカドット(DOT)特有の仕組みとして最も大きな吸収効果を発揮していました。

    スロットとは、ポルカドット(DOT)本体(リレーチェーン)に外部の独自チェーン(パラチェーン)を接続するための「枠」を意味します。
    プロジェクトはこのスロットを得るために、2年間にわたって多額のポルカドット(DOT)をロックします。このロックによって市場流通量が抑制され、結果的に発行によるインフレ圧力を中和する役割を果たしていました。

    しかし、こうした「発行と吸収の均衡」は長く続きませんでした。
    2022年以降、市場の冷え込みによりスロットオークションの参加が急減し、ポルカドット(DOT)をロックする動機が薄れていきます。
    図1. クラウドローン参加者数の推移
    図1. クラウドローン参加者数の推移(HashHub提供)

    特に、一般ユーザーがポルカドット(DOT)を貸し出して報酬トークンを受け取る「クラウドローン」では、報酬トークンの価格が暴落し、資金を貸すメリットが失われました。
    ロック需要の縮小とともに、発行されたポルカドット(DOT)を吸収する仕組みが急速に弱まり、供給だけが増えるアンバランスな状態が生まれます。
    図2. スロットオークション落札額の推移
    図2. スロットオークション落札額の推移(HashHub提供)

    2021年初期にはスロット1件あたり約3,000万DOT規模の入札がありましたが、2024年にはおよそ30万DOTにまで急減。
    市場全体の熱量が冷めるなかで、ポルカドット(DOT)経済を支えていた「ポルカドット(DOT)ロックによる需給調整機能」が実質的に働かなくなりました。

    こうして「ロックが減る → 供給が増える → 価格が下がる」という悪循環が生まれ、固定コストが重くのしかかります。
    ここから、ポルカドット(DOT)が抱えていた“固定費構造の罠”が一気に顕在化していきます。

    固定費構造の罠

    図3.2年間のスロットロックが招いたポルカドット(DOT)評価額の下落幅(上位10)
    図3.2年間のスロットロックが招いたポルカドット(DOT)評価額の下落幅(上位10)(HashHub提供)

    ポルカドット(DOT)のパラチェーン接続は、利用量に関わらず高額なポルカドット(DOT)ロックを伴いました。
    例えばMoonbeam(ムーンビーム)は2021年12月に約8.8億ドル相当のDOTをロックしましたが、解除時には暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)価格下落により評価額は約1.5億ドルへと83%減少。
    価格下落が進むほどドル換算の“維持コスト”が増すという逆転構造でした。

    競合のコスモス(ATOM)(変動制セキュリティ)やイーサリアム(ETH)(L2利用ベース課金)と異なり、ポルカドット(DOT)は「需要が減ってもコストが変わらない」固定費モデルを維持したため、2023〜2024年の景気後退局面で最も脆弱でした。

    結果的に、

    1. オークション需要の縮小
    2. DOTロックの減少
    3. 経済循環の崩壊

    という三段階の連鎖が起き、ポルカドット(DOT)は「技術ではなく構造に敗れた」格好となりました。
    この構造的な失速こそが、のちに進められる再設計──Agile CoretimeやAssetHubなど──の出発点となります。

    【2025年11月最新市場分析】暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)の価格動向と将来予測

    2025年11月時点のポルカドット(DOT)はおよそ3ドル前後で推移し、時価総額順位は36位前後に位置。かつて上位常連だった時期から大きく後退しています。
    図4. 2021年から2025年11月までのポルカドット(DOT)・ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)時価総額の年次推移
    図4. 2021年から2025年11月までのポルカドット(DOT)・ビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)時価総額の年次推移(HashHub提供)

    2021年〜2023年にかけては市場全体と概ね同調していたものの、2024年以降はビットコイン(BTC)とイーサリアム(ETH)が時価総額を拡大する中で、ポルカドット(DOT)は追随できず縮小。主要銘柄との差が鮮明になりました。

    この低迷の背景には、前述のネットワーク接続に高い固定コストがかかる設計や、利用が増えてもポルカドット(DOT)需要が直接連動しにくい構造など、経済的な非効率があります。
    一方で、現在ポルカドット(DOT)はこうした構造的課題を解消するために、複数の再設計を進めています。

    • Agile Coretime(アジャイル コアタイム)導入:ネットワーク利用を「2年固定」から「28日ごとの従量制」に切り替える仕組みが2024年9月に導入され、各プロジェクトの移行が進んでいます。国産プロジェクトとして知られるAstarも2025年8月に対応し、Agile Coretimeへの移行が着実に広がっています。
    • インフレ抑制策「Referendum1710」:報酬配分と発行スケジュールを見直し、ポルカドット(DOT)の新規供給を抑制する方針です。2025年9月に提案可決されており、2026年3月に第一ステップ(新しい発行モデルへの移行)が開始される計画で、長期的な価値維持と資本効率の改善を狙います。
    • AssetHub(アセットハブ)整備:リレーチェーンに集中していた資産管理機能を専用レイヤーへ切り離し、経済設計の非効率を是正するための再設計として、2025年11月4日にAssetHubへの移行が実施されました。これによりUSDCのネイティブ対応を含む共通アセット基盤が本格稼働し、トークン発行や決済など“実需の入口”が広がっています。

    …etc
    これらは、「使われないネットワーク」から「流動性が循環する経済圏」への転換を目指す一連の改革です。
    現状のポルカドット(DOT)の価格は低迷していますが、これらの施策が機能し始めれば、再び開発者・ユーザー双方にとって魅力的なプラットフォームとして復活する可能性もあります。

    暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)は今が買い時か?

    図5. ポルカドット(DOT)の市場価格推移(上)およびビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)との3日移動平均リターン比較(下)
    図5. ポルカドット(DOT)の市場価格推移(上)およびビットコイン(BTC)・イーサリアム(ETH)との3日移動平均リターン比較(下)(HashHub提供)

    2025年4月以降の暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)の価格は、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)とほぼ同じような動きを見せています。
    この時期は市場全体の流れに沿って推移しており、ポルカドット(DOT)だけが独自に上がったり下がったりするような動きはほとんど見られません。
    そのため、今が「買い時」と言えるような特別な局面ではないと考えられます。

    ただし、ポルカドット(DOT)はちょうど仕組みの転換期にあります。
    ネットワークの使い方を見直す「Agile Coretime導入」や、ポルカドット(DOT)の発行量を抑えるインフレ対策、そしてAssetHub(アセットハブ)を通じたステーブルコインの活用拡大など、基盤づくりが進んでいます。これらの取り組みが実際に利用拡大につながれば、来年にかけて再評価されるチャンスも十分にあります。
    現時点では価格の方向感ははっきりしませんが、ネットワークの利用量やトランザクション数の回復が見え始めたタイミングが、今後の注目ポイントになりそうです。

    暗号資産(仮想通貨)ポルカドット(DOT)の今後の展望と将来性

    ポルカドット(DOT)は、「ブロックチェーン同士を安全につなぐ」という理想のもとに誕生しましたが、長期間のロックを前提とした固定費型モデルが、市場環境の変化に対応できず限界を迎えました。
    いまポルカドット(DOT)は、スロットオークションの終焉を経て、使われた分だけコストを支払う“変動費型モデル”への転換を進めています。
    Agile Coretime構想やAssetHubの拡張など、経済の再循環に向けた再設計がその中心です。
    今後注目すべき指標は以下の3点です。

    • Agile Coretime(コアタイム)販売の稼働率と価格の安定性
    • AssetHub(アセットハブ)上のUSDC流通量とDeFi全体のTVL
    • 開発者数や新規パラチェーンの増減動向

    これらがそろって拡大すれば、ポルカドット(DOT)は再び“循環するネットワーク”として成長軌道に戻る可能性があります。
    一方で、理念だけが先行し、利用が伴わなければ再び「構造の罠」に陥るリスクも残ります。

    ポルカドット(DOT)はいま、“理想と現実のはざま”で再設計を続けています。
    それは敗北ではなく、Web3の原点──「つながるインターネット」を再構築する実験の継続なのです。

    [参考文献]